「歯科医院の税務調査」・・・会計事務所での強烈な実体験⑤

会計事務所
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歯科医院を営む、ある医療法人の税務調査

今回は、過去に私が体験した税務調査の体験談です。
8年くらい前のことです。歯科医院を営む、ある医療法人に税務調査の依頼がきました。その医院は1つの医院から順調に業績を伸ばし、M&Aをしながら拡大し、税務調査が入った時は分院が3つほどになっていました。医療法人を設立して5年ほど経過していたので、ちょうど税務調査が入る頃合いでもありました。
私はその医療法人の担当ではなく、もともとは同僚のベテラン社員が担当していました。ところがそのベテラン社員が退職してしまい、私の部下の若者が引き継いだのですが、その直後に税務調査が入ったため、私も同席するという流れになりました。そんな経緯もあり、私も担当の若者も、その医療法人についての詳細は把握できていない状況でした。

私的と思われる支出が多々あり・・・、それと・・・

その医療法人の理事長は歯科医師のドクターで、奥様は理事として、事務の仕事をしていました。このご夫妻は事務所でも評判の浪費家でした(*´Д`) 何度も指導を試みたようなのですが、会社の経費と個人の支出がごちゃごちゃで、「全部経費に入れて」といったタイプの方々で、帳簿も全く整理されておらず、ぐちゃぐちゃな感じでした。事前に元帳を見てみたのですが、噂の通り、多額の交際費やら消耗品費やらが目立っていて、車もご立派な車種を所有していたりしました。当時、中小法人の交際費の損金算入限度額は年600万円(現在は年800万円)だったのですが、その医療法人の交際費の額は毎年600万円ギリギリで、他勘定に交際費が見つかった場合は、それだけで加算が出てしまう状況でした。
それに加えて、帳簿上、治療をした患者から回収した金属の売上が全く上がっていないことに気がつきました。歯科医院の場合、患者を治療した際に、元々歯に施されていた金パラジウムなどの金属を外して回収することがあります。これはそのまま使えませんので、専門の金属買取業者にまとめて売ったりするのですが、これが結構な値段になります。ひと昔前は、この金属の売上を計上しないことが横行していたようです。理由は、仕入がゼロ円なので調べづらいことと、買取業者から、この売却代金を現金で受け取ることができ、そのまま抜いてしまえばわからないだろうから、といったことでした。ただ、この買取業者側では仕入れとして経費にしているでしょうから、その業者を調査をすれば、芋づる式にわかってしまいます。
何だか嫌な予感しかしませんでした。税務調査なんてただでさえ気が進まないのに、全く気がのらないまま、税務調査が始まりました。

長い2日間・・・

税務調査は2日間行われました。やってきた調査官は2名で、50代(男性)のベテラン調査官と、20代前半(男性)の若者でした。場所は本院のちょっとした打ち合わせスペースで行われました。理事長に1時間程度、経歴や事業内容についてのヒアリングが行われ、帳簿の調査に入っていくのですが、ここで理事長には退室してもらいました。
案の定、早々に交際費について指摘が入りました。多額の飲食費や、良くわからない贈答品(とされていたもの)について、誰と行ったのか、誰に贈答したのかなど、確認をしたいとのことでした。会計事務所としては、交際費などは、誰と行ったか、誰にあげたかなど、例えば領収証の裏に記載するよう指導をするのですが、ほとんど書かれていませんでした(*´Д`) ある程度ピックアップしたものを、あとで理事長に確認することになりました。
そして、ベテラン調査官が「金属の売上が上がってない」と言いました。来たか・・・、と思いました。理事長に事前に確認したところ、金属の回収売上は存在し、業者から現金で受け取っていたため、そのまま自分で管理(たぶん流用)して、法人には入れていないとのことでした。理事長は、これについては争うつもりはないので、指摘があったらそのように言ってもらって構わない、とのことでした。ということだったので、そのまま調査官伝えることにしました(^-^; ベテラン調査官もやや呆れた感じで、「買取業者に確認をして、売上高の確定をします」となりました。

2日目も後半になり、そろそろ終わらないかなぁと思っていると、若者調査官が神妙な面持ちで、「言いづらいのですが、確認したいことがあります」と言ってきました。最後にまだ何かあるのか(;゚Д゚) とドキドキしていると、若者調査官が「この交際費とされる洋服購入の領収証と同じ日に、理事長の奥様のブログでこの洋服が紹介されています」と言ってきました。ブログを見てみると「かわいいお洋服買っちゃいました~💛」みたいな感じで、奥様ががんばった感じで可愛らしく、ブログにのってました(*´Д`) 交際費についてはある程度は否認されても仕方ないと思っていたので、改めて神妙な感じでそんなこと言うなよ~と思いつつ、弁解のしようがない証拠も残してしまって・・・、何だか我々が調査に立ち会った意味あったのかな~と考えさせられました・・・(*´Д`) 

顛末

交際費についてはその後に説明と交渉を重ね、指摘があったものをだいぶ減らすことがきました。とは言え、説明のつかない交際費と金属の回収売上の過去5年分を調べられ、5年分の修正のトータルで数百万円が役員賞与とされました。結果、法人税では損金不算入により追徴課税、役員賞与にかかる源泉所得税の発生と不納付加算税がプラス、消費税も追徴課税、さらに個人の所得税と住民税が増加、さらにさらに過少申告加算税と延滞税、ダメ押しで重加算税も課されました(*´Д`) 一般的に言われる、税務調査での最悪のケースとなりました。この時は、役員賞与ではなく理事長への「貸付金」としてもらう余地はありませんでした。
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理事長も、税務調査が入ったらある程度は仕方ないと覚悟をしていたようで、我々会計事務所を責めるようなことはしませんでした。このあとこの医療法人は、この税金の支払いのために資金繰りが悪化し、金融機関に頼るなどして、再生を図っていくことになりました。理事長夫妻もこれまでのような浪費生活はできなくなり、少しは痛い思いをしたと思います。

もしこの理事長夫妻から「こんな税金になったのは会計事務所のせいだ」とか言われてしまっていたら、大変やっかいでした。日頃コミュニケーションを取れていても、いざという時はわかりません。リスクの少ないお客様と付き合っていくことも大事だと感じた出来事でした。

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