「不動産業の税務調査・・・」会計事務所での強烈な実体験④

会計事務所
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不動産業を営む、ある法人への税務調査

今回は過去に私が経験した税務調査のことを書きたいと思います。
5年くらい前のことになります。私が担当をしていた、ある不動産業を営む法人に、税務調査の依頼が入りました。時期は11月でした。年内の税務調査は相手も本気でくるので、嫌だな~と思っていました(*´Д`)
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その会社は、主に建売を行っていました。色々な人脈からの情報を元に土地を仕入れ、自社で戸建てを施行し、一般ユーザーへ売る、といったビジネスモデルです。創業10年、従業員数は10名ほどで、業績は順調だったのですが、税務調査が行われるのはその時が初めてでした。

事前の懸念事項・・・

基本的にはまじめに事業を行っていらっしゃって、目立った懸念事項はありませんでした。ただ、車を数台保有していて、営業車として使用していたのですが、そのうち1台は結構お高いお車で、あまり一般車道では見かけないようなお車でした(^-^; もちろん法人契約で保有していたのですが、その車を減価償却費として経費にしていましたし、その車の維持や修理にかかる費用も経費にしていました。
その車を保有していた理由ですが、特別な車の「オーナーの会」のようなものがあり、そこで知り合った人脈から、大きな売上に繋がる可能性があるからでした。実際のところ、本当に売上に繋がった実績もあったので、問題はないと考えていました。また、この車ですが、基本的に時間の経過とともに値が下がるどころか、逆に上がったりもしていたので、最終的には税金を減らす効果はない、ということも答えとしては用意しておきました。

もう1点、不動産業というと、どうしてもお付き合いの経費が多くなってしまいます。この会社も例外ではなく、交際費等はそれなりにかかっていました。

指摘があるとすると、車か交際費かな~と思っていました。

私と社長の人間関係はとても良好(と私は思ってました(^-^;)だったのですが、とはいえ不動産業です。もしかすると、私の知らないところでお金が動いていたりして、相手に何かつかまれているのではないかと思ってみたりして、少し心配なところはありました。
そんなこんなで調査が始まりました。

中堅調査官が1名で・・・

調査の日程としては、社長のご要望とこちらの都合もあり、とりあえず1日だけとしてもらいました。やってきたのは30歳半ばの男性の中堅どころの調査官1名でした。午前中の1時間程度は社長に対し、経歴や業務のヒアリングが行われ、その後、帳簿書類のチェックに入っていきました。午後に入り社長は外出され、しばらく調査官と我々との時間になりました。

上席登場!!

15時くらいになっても、目立った指摘事項は出てこず、「このまま何もなく終わるかな・・・」と、私の気分が上がりそうになったときでした。その調査官が突然、「これから上席が来ます」と言うのです(;゚Д゚) 上席とは、その課を取り仕切る、いわゆる偉い人です。上席が現場の調査にいらっしゃるのは珍しいことではないのですが、後から来るなんて、すごい嫌な感じですよね(*´Д`) ただ、拒否する理由もありません・・・。「社長、何か握られているのかな・・・」と思い、隙を見て社長に電話して聞いてみたのですが、「何も思い当たらない」と言われました。なすすべなく、上席をお迎えすることになりました・・・。

ざっくばらんな展開に・・・

上席も元帳をペラペラめくりながら、部下である調査官に、「何か問題点はあったか?」と尋ね、調査官は「この辺りの経費が少し・・・」といったやり取りをしていました。すると上席が、私に「今日で調査を終わらせたいから社長を呼んでほしい」と言ってきました。私もムダに引っ張っても仕方ないと腹をくくり、社長を呼び、来てもらいました。
すると上席が社長に対し、「これとこれとこの経費が、私的なものと考えられるから、これを修正してもらいたい。」と言ってきました。金額にして、大した金額ではありませんでした。それに加えて上席が「社長、何か隠し事とかないよね?大丈夫だよね?」と言ってきました。私も唖然としてそのやり取りを見ていると、その質問の真意について、上席が説明してくれました。
先日、この税務署所轄内の別のA社という不動産業者の税務調査を行った際に、最初の調査では何も見つからなかったそうなのですが、後日、別のX社の税務調査を行った際に、反面的にA社の脱税が発覚したそうで、最初に見つけられなかったこの税務署のメンツが潰れてしまった、という出来事があったそうです。その影響で、何件か不動産業者の税務調査を行っているとのことでした。

結局、特に何も握られていませんでした(*´Д`) 経費の指摘事項については、他にももっとあったと言えばありましたし、金額的にもこれで済めば良いと社長も納得をしていたので、それに応じることしました。

ちなみに、修正の仕方ですが・・・

今回、法人の経費(損金)にしていたものが、法人の経費ではなく、その役員の私的な支出だとされました。この場合の修正の仕方は、その支出を「役員賞与」とし損金不算入とし、その分、法人の課税所得が増え、追加で法人税等を支払います。また、この役員賞与に対しては源泉所得税を徴収する必要があるため、法人はその源泉所得税も支払います。さらに、この「役員賞与」は社長個人の所得も増やしてしまうため、社長個人の所得税と住民税が増加することになります。さらにさらにこれらの税金に対し、延滞税等の罰金が科されます。税務調査において「役員賞与」とされることは、最悪のケースと言われています。
今回、金額は大したことはないものの、「役員賞与」とされるとやっかいだなと思ったので、その場で上席に対し、「社長への貸付金で良いか?」と尋ねたところ、「貸付金で良い」と返答されました。私は「よし!」と思いました。

昔は、法人として元々経費(損金)として取り扱っている以上、修正申告において、その性質までを変えることはできず、資産項目である「貸付金」にはできない、とされていたらしかったのですが、近年は違う見解もあるようです。「貸付金」であれば、経費の否認と、その貸付金に対する利息収入の追加計上(認定利息)だけで済み、法人税等の追徴だけで済みます。「役員賞与」とはかなりの違いです。ちなみにこの会社、社長からの借り入れ(いわゆる短期借入金)が、この「貸付金」とされた金額以上にあったので、利息の計上もしませんでした。

それにしてもざっくばらんな上席でした。車についても、「社長、良い車に乗っているね~」と言っただけで、あとは何も言われませんでした(^-^; 上席の帰り際を良く見てみると、どうやらカバンも持たずに手ぶらできていたようで、手ぶらで帰って行きました(^-^; 税務署が近かったということもあるのですが、手ぶらで来るとは・・・。1日で終わって良かったのですが、とっても濃密な時間だった経験談でした。

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