会計事務所は儲かるの?そのビジネスモデルとは?「実務:その10」

会計事務所
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イメージしづらい、会計事務所のビジネスモデル

会計事務所や税務の業界って、他の業種に比べて堅そうなイメージがありませんか?士業といわれる業界ですし、実際ややお堅いと思います。景気が良いとか悪いとか、儲かるとか儲からないとかいう意識が、他の業界に比べると少し低いと思います。実際は儲かるのか?と問われると、答えは「能力とやり方次第」かなと思います。どの業種もそうだと思いますが(^-^; ただ、世間のブーム的な流れで急激に売上が上がったりはしないので、大儲けはない業界なのかなと思います。
最近はクラウド会計や分業が進んできており、会計事務所古来のビジネスモデルが少しずつ変化していますが、今回はこれまでの一般的な会計事務所のビジネスモデルをひも解いていきたいと思います。規模としては、税理士が3~5名で、従業員数が10人~50名ほどの中規模な会計事務所を対象に考えていきます。

売上は「顧問料!」

会計事務所の売上は、当たり前ですがお客様から頂く「顧問料」です。この顧問料は顧問契約を締結することによって決まります。
(関連記事:会計事務所の顧問契約はどんなものがある?「実務:その8」
この「顧問料」は、月額の「顧問料」と年に1度の「決算料」で構成されます。金額はその会社の規模に応じたサービスの内容によって決めていきます。この金額は会計事務所によって様々ですが、年商2億円程の中小企業との顧問契約だと、記帳を請け負った場合で、月額4万円~6万円、決算料が20万円~30万円で、年間70万円~90万円くらいが相場ではないかと思います。規模がやや小さく、サービスもそこまで要求されないようであれば、年間30万円~50万円ほどでしょうか。中には年に1度の決算のみ行い、年間10万円~20万円の場合もあると思います。
また、年に月額顧問料の他に、スポットで発生する売上があります。代表的なものは、「年末調整業務」「償却資産税の申告」です。「年末調整」は、「基本料金2万円+一人あたり2千円」などが一般的です。「償却資産税の申告」は、一律1万円~2万円と決めるか、資産の数によって変動するか、どちらかになると思います。
この他、個人の確定申告をスポットで請け負う場合などは、顧問契約書は結ばず、見積書や口頭での合意で「確定申告料」として頂く場合があります。また、税務調査があった場合や、相続があった場合も、スポットで報酬を頂きます。(資産税に特化した会計事務所のビジネスモデルは、また別の機会に書いていきます。)

売上原価??

会計事務所はモノを仕入れて売ったり、作ったりしている訳ではないので、売上原価はありません。粗利100%の業種になります。

固定費

あとは固定費ですね。会社の家賃やシステム費用など色々ありますが、メインは「人件費」ですね。完全に労働集約型のビジネスモデルです。ですので、売上高と人件費のバランスが非常に重要になります。

担当者の売上目標設定

ここまで会社としての会計事務所の収益構造を見てきました。そこで、このようなビジネスモデルの場合、1人の担当者がいったいどのくらい売上を上げれば良いか問題になります。お客様の業種や規模も様々で、顧問料も一律ではないので一概に言えない部分はあるのですが、私のこれまでの経験上、担当者1人あたり、担当件数20件、1件あたりの年間顧問料が平均年70万円として、年間1400万円の売上高を上げていれば、まずまずなのではないかなと考えています。この場合で、その担当者の年収は500万円~600万円ほどではないでしょうか。ただ、仮に20件全ての記帳を請け負っていると、担当者だけで完結することは難しいので、このうち10~15件程度は、内勤の方や若者に記帳を任せることになると思います。また、記帳については、年商2億円ほどの会社で、月の仕訳数が300~400仕訳で、入力時間が3~4時間ほどが採算ラインかなと思います。これ以上になっている場合は、教育をして作業レベルを上げるか、もう少し顧問料を上げたいところです。この売上の中から、内勤の方やまだ稼げない若者の給料も捻出しないといけない訳ですから。

担当者のその先の未来

会計事務所も色々ですが、小規模な会計事務所であれば、顧客数が増えもしないし減りもしないような会計事務所もあると思います。この場合は、一人の担当者が担当顧客をどんどん洗練していって、より効率良く業務をすることでコストを抑え、給料を上げていくことになります。ただ、この場合、会社として伸びていないので、昇給は限界があります。
順調に仕事が増える会計事務所であれば、人の採用が必要になってきます。そのような会計事務所には「教育」が必要です。この教育は誰が行うかというと、経験豊かな中堅やベテランが行うべきとなります。そうなると、中堅やベテランは教育に力を注がなくてはならず、これまで通り多くの顧客を担当することができなくなります。ですので自分は担当数を減らし、部下のマネジメントがメイン業務となり、その部下たちが売上を上げることにことにより、自分の給料が上がっていくことになります。

教育について

私は、会計事務所において、教育は非常に重要なテーマだと思っています。やや職人気質の業界でもあり、自分は仕事ができて稼げる(かもしれない)が、下に教えることが苦手な人が多い業界のように感じます。これでは会社としての発展がないですよね。会社という組織で動く以上は、自分1人で2000万円稼ぐよりも、1500万円稼ぐ部下を3人、4人と増やしていける人材の方が、評価を高くすべきだと思っています。後者の方が圧倒的に会社に貢献している訳ですから。

ちょっと話が反れましたが、以上が会計事務所のビジネスモデルです。全体的には、やっぱりちょっと地味ですよね(^-^; 「今月は種をまいた営業が花咲いて、ノルマ達成した!!」みたいな盛り上がりはあまりありません(^-^; 業界的には、このような採算の目をもって取り組んでいる人は少ないように思います。各担当者は社長に「もっと売上を上げましょう!」みたいなことを言っているんですけどね(^-^; ただ、最初に触れましたが、このようなビジネスモデルも、クラウド会計や分業、AIの進歩や、まれにみる人手不足のため、変化しつつあります。生き残っていくためにも、今後どのようなビジネスモデルを構築していけば良いか、常に考えていかないといけないと思っています。

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