令和元年分、確定申告の総括!!個人事業を行っている方編

会計事務所
スポンサーリンク

申告期限が延長しましたが・・・

新型コロナウイルスの影響で、確定申告の期限が令和2年4月16日まで延長されましたが、今回の確定申告の作業は概ね完結しました。私の勤めている会計事務所では、所得税の申告が比較的多く、今回は私の担当で40名ほど、私の部下3名の担当の合計で70名ほどの方がいらっしゃいまして、部下のチェックも含め、110名ほどの申告に携わらせて頂きました。今回の記事では、令和元年分の確定申告を実際に行ってみての総括をしてみたいと思います。

事業所得のポイント

(1) 中小企業向け 所得拡大促進税制
こちらは以前からある制度ですが、個人事業の方は令和元年分の申告から若干の改正がありました。概要は、平成30年分と令和元年分を比べて、従業員に支払った給与が増えている場合、税金を安くしますよっていうものです。主な要件は下記になります。
 ①青色申告である。
 ②平成30年分より、令和元年分に支給した給与が増えている。
 ③平成30年1月1日から令和元年12月31日までの2年間、ずっと雇用されていて、かつ雇用保険に加入している人(継続雇用者)の賃金が、平成30年分と令和元年分を比べて、1.5%の賃上げがされている。

この3つを満たした場合、②で比較した全体の給与の増加額の15%を税額控除できるというものです。
さらに、この制度には控除の上乗せ措置があります。上記③(継続雇用者)の賃上げ率が2.5%以上で、「教育訓練費が前年と比較して10%以上増加している」か、「中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること」のいずれかを満たすと、先ほどの15%が、25%まで引き上がります。
ただし、15%の適用でも25%の適用でも、発生した所得税額の20%が上限となります。
細かな論点もありますので、詳しくは下記をご参照ください。
・中小企業庁HP: 中小企業向け所得拡大促進税制ご利用ガイドブック
・国税庁HP: 中小事業者が給与等の引上げを行った場合の所得税額の特別控除に関する明細書

これは、以前から行われている所得拡大促進税制の流れですね。以前と比べ要件が簡素化されましたが、開業初年度は適用できないなどの、改正が行われました。とは言え、かなり使いやすい制度に変わりはありません。ちなみに個人事業の場合、令和3年分まで適用ができます。下記の記事で、これの適用もれで訴えられている税理士が多いという記事を書きましたが、みなさんも気をつけましょう(^-^;
・「消費税が簡易課税!?」会計事務所での強烈な実体験②/税理士ミス 訴え頻発

(2) 中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例
これはメジャーな特例ですね。これも青色申告が要件ですが、取得した1コの資産が10万円以上、30万円未満の場合、即時に経費にできる、というものです。ただ年間の枠としては300万円までという縛りがあります。これはみなさん使い慣れていると思うのですが、ポイントは枠が「年300万円」というところです。個人事業の場合、年の途中で開業した場合、この300万円に制約が生じます。例えば7月に開業した場合は、12月までは6か月になりますので、この特例で経費にできる枠は、300万円 ✕ 6/12=150万円となります。
少し話がそれますが、消費税法における個人の計算は、個人事業がいつ開業したかに関わらす、諸々の計算は暦年で計算します。これは個人はあくまで人であり、人としては切れ目がないということで、そのように規定されています。この感覚が残っていると、300万円はそのまま使えるのではないかと、間違えてしまいそうですよね(^-^;
余談ですが、個人事業の「開業」っていつなのか?という論点があります。売上が生じてしまったら少なくともその時が「開業」と言えそうですが、売上がなくても「今日から開業する!」という意思で行動し始めたら「開業」とも言えそうです。多くの場合は、個人事業の「開業届」や「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しますが、その書類に事業開始日を明記する必要がありますので、そこで意思表示することになり、結論としてはその日が「開業日」になりますが、その日をいつにするかで、この特例の枠が決まってくることになります。
ちなみに実はこの制度、現在は「令和2年3月31日までに取得した資産までの適用」となっています。なんと期限がもうすぐです(;゚Д゚) ですが、現在の国会で税制改正(案)の審議がされていまして、2年間延長することが見込まれています。この制度は平成18年からあり、ずーっと延長されてきています。みなさん当たり前のように適用していると思いますが、なくなってしまったら結構衝撃ですよね(^-^;

譲渡所得のポイント

(1)事業用資産(土地建物等以外)の譲渡
例えばですが、個人事業を行っている人が、所有する車を事業に使用するので経費(減価償却)にしていたとします。それで、その車を譲渡した場合ですが、会計の知識があると、譲渡した価格と残っている簿価との差額を「売却益」や「売却損」として、事業所得の損益にしたくなりますよね(^-^; しかし、これは間違いです。この取引については、事業所得ではなく、「譲渡所得」として他の所得と合算して(総合課税)、申告をする必要があります。この「譲渡所得」の計算は下記のようになります。

〇その資産の所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)
譲渡所得の金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-50万円


〇その資産の所得期間が5年超の場合(長期譲渡所得)
譲渡所得の金額={譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-50万円}✕1/2


※参考
・国税庁HP:譲渡所得の計算のしかた(総合課税)

どちらも50万円の控除額があるので、譲渡利益の50万円までは無税ということですね。さらに所有期間が5年超だった場合は、50万円を引いた上で、残りを半分にした金額を他の所得に合算することになります。
結構優遇されてますよね(^ ^)

雑所得のポイント

(1)還付加算金
前年の確定申告で、多額の所得税の還付があった場合に、税務署はその所得税に利息をつけて還付をしてくれる場合があります。これを還付加算金といい、雑所得として申告の対象になります。もともと支払うべき所得税よりも多く前払いして、預けていたという認識のもとに、利息が付されます。前払いの理由もよるのですが、100万円の還付で1000円~2000円の還付加算金かな、というイメージです。
還付が多くなる理由は様々ですが、大前提として、所得税を前払いしている方になります。
例えば年の途中で開業した場合、年の前半は給与で所得税が源泉徴収されていて、開業後の事業で、その給与の黒字がなくなってしまうくらい赤字になった場合です。この場合は前半に給与で徴収されていた所得税が全額還付になり、多額になる場合があります。
また、医業を行っている方は、還付が多くなるケースがあります。保険診療を行っている場合ですが、診療報酬(売上)のうち、サラリーマンとその家族が加入している協会けんぽの保険証で診療した場合、2か月後に社会保険診療報酬支払基金から窓口負担以外の部分が振り込まれます。この入金に対して一定額の所得税が源泉徴収されて仕組みになっています。診療のうち社保の割合が大きいと、年間を通してかなりの金額が源泉徴収されることになります。ちなみにこの源泉徴収の制度は、国民健康保険の方や、後期高齢者医療保険の方が受診した場合には、適用がありません。
あとは弁護士や税理士などの士業の方ですかね。士業の報酬も源泉徴収されることになっていますので、結果的に還付になることがあります。

還付加算金は、うっかりすると見落としてしまいます(^-^; 還付された時に、税務署から届くハガキに記載があるのですが、これを入手できないことも多く、申告書の還付金額と、実際に通帳に振り込まれた金額との差額を確認したりして、把握することになります(*´Д`)
確定申告の作業工程で、事前に税務署から届く「お知らせ」を必ず確認するのですが、そこに記載しておいてもらえないかな~と思ったりします(^-^; 

今回は個人事業を行っている方の論点をメインにまとめました。今年は110名ほどのチェックをしましたが、今年もいろいろな方がいらっしゃったなぁという印象です(^-^; 確定申告書を見ると、その人となりがイメージされてきますよね(^-^; 
近々、不動産所得や分離課税、各種控除などについても書いていきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました