記帳代行とは?③「会計事務所の実務:その3」

会計事務所
スポンサーリンク

前回「記帳代行とは?②」の続きです。
お客様への対応という視点での続きになります。

会計事務所で記帳代行を行う場合ですが、
お客様からお預かりする月次資料(入力のために必要な資料)は主に下記になります。
①売掛帳(と請求書控え)
②買掛帳(と請求書)
③現金出納帳
④預金通帳のコピー
⑤立替経費精算書
⑥クレジットカード利用明細
⑦給与データ(支給控除一覧)
⑧その他の支払明細
⑨その月に交わした契約書のコピー

会計事務所の担当者は、これらの資料をしっかりと用意してもらうよう、
お客様に説明をする必要があります。
一つずつひも解いていきたいと思います。

①売掛帳(と請求書控え)

これは月の売上高と、その月末時点の売掛金残高を把握する資料になります。
製造業や卸売業など、得意先が多い業種の場合は、売上管理ソフトや請求書の発行ソフトを導入しているところが多いので、そのシステムから出力できるものを確認すると良いと思います。
項目は得意先別に、
「前月繰越残」「当月入金額」「当月請求額」「次月繰越額」が、記載されているものが必要です。
売上管理と請求書発行のソフトが一体であれば、請求書の控えは預からなくて良いと思います。

これを元に、会計事務所は「当月請求額」を
「売掛金××/売上高××」と仕訳します。
通帳に入金があれば、「預金××/売掛金××」とし、
最終的に試算表の売掛金残高と売掛帳の「次月繰越高」の数字が一致することになります。

経営していく上で、何はともあれ売上が最重要です。
中小企業の社長は、他のことは得意でなくても、売上を上げることは得意な場合が多く、
必ず、早く月の売上高を把握したいと思っているはずです。
(もしその認識が薄いようだったら、意識してもらうよう指導した方が良いです。)
なので、会計事務所の担当者は、そこは社長と同じ考えでいる必要があります。
預かる資料は、誰が見ても「瞬時に月の売上高がわかるもの」というところが重要です。
月の売上高と、その会社の粗利益率がわかっていれば、入力をする前に、その月のおおよその利益が把握できます。
この考え方・手法はとても使える方法でして、また別の機会に説明したいと思います。

中小企業の社長と渡り合うには、スピード感が重要です。
慣れてくると社長に対し、次のような話し方が、その場でできます。
「今月の売上は3,000万ですか。それだとだいたい今月の利益は400万くらいですね。決算までの残りの期間の売上予想が7,000万とのことですので、
このままだと今期は3,000万くらいの利益がでそうですね。資金も十分あるので、キャッシュフローを考えると、
500万くらい利益が圧縮されるような節税をしても良いですね。具体的な方法は…。」

これぐらいのことをすぐに話せるようになると、社長の信頼を得られて、こちらも仕事がしやすくなります。

得意先が5社以内ほどでしたら売掛帳を作らず、請求書の控えを全て預かる方法で良いかもしれませんが、5社を超えるようになってきたら作成が必要だと思います。
月の売上高を瞬時に把握することの他に、もう一つ重要な目的があります。
それは「資金繰りのため」です。
どの取引先にいくらの債権を持っていて、それがいつ入金されるかを把握できていないと、管理上かなり危ないです。
結局、お金がショートするとアウトですので、その把握のためにも作成が必要です。

売上管理ソフトなどを導入していない場合は、エクセルなどを使って売掛帳をつけて頂くしかないかなと思います。無料のツールがネット上にあったりしますので…。

小売業のような現金商売のお客様は、この売掛帳は不要ですね。
ただ、月の売上が一目でわかる日々の売上管理帳や、月の売上をまとめたレジシートの控えなどは預かり、確認が必要です。

以上が①売掛帳のポイントになります。

②買掛帳(と請求書)

これは別名「支払管理表」ですね。
主に、売上に対応する仕入れ先からの請求書をまとめたものです。
項目は売掛帳と同じように、
「前月繰越残」「当月入金額」「当月請求額」「次月繰越額」の項目が必要です。
ここでも大きな目的は「資金繰りのため」ですね。
支払いをする月末などに、いくら必要かどうかを把握できていないと、
管理上非常に危ないです。
そのために買掛帳を作成してもらい、経営に役立ててもらいつつ、
それを月次資料として預かるようにします。
「当月請求額」を「仕入××/買掛金××」とし、
支払ったら「買掛金××/預金××」といった具合に消込みします。

ここで管理するのは、
基本的には売上に対応する原価(仕入れ)の請求だけで良いと思います。
厳密にいえば、電話代や光熱費も当月分を翌月に支払うのですが、
これら固定費の支払いは、毎月の金額があまり変わらず、金額も小さく、数も多いので、ここまで行うと煩雑かなと思います。
固定費は基本的には現金主義(支払い時に経費にする。)で良いと思います。
仕入れは変動費ですね。売上が大きくなれば仕入れも大きくなりますし、その逆もあります。
変動費は金額も大きくなりますし、
ちゃんと売上に対応する適正な仕入の割合になっているかの確認が必要ですので、もしお気づきでない経営者の方がいらっしゃったら、説明されてみてください。

ここからはどんどんいきます。

③現金出納帳

小売業などの現金商売や、小口現金が必要な業種には必要な資料になります。
手元現金の日々の「入金」と「出金」と「残高」がわかる資料です。
出金は主に「経費」ということなりますので、その領収証も併せて預かります。

④預金通帳のコピー

これはそのままですね。会社(事業用)のすべて通帳のコピーを預かります。

⑤立替経費精算書

これは、社長を含め従業員が立て替えた経費をまとめたものになります。
エクセルなどに月締めでまとめるのが一般的かと思います。
立替経費精算書の合計額を、社長や従業員に直接振り込みをします。
あまりおすすめしませんが、仮払金(前渡し)があったらこれに反映します。
私は基本的にはお客様に、会社で現金は持たないように奨めています。
理由は、現金はどこかでほぼ必ずといっていいほど残高が合わなくなり問題になります。
また、我々も行方不明になった現金の処理に困ってしまいます((+_+))
税務調査があった場合も、現金勘定があると、調査官から、
「今の現金残高と帳簿が合っているか確認したい」と言われたりして面倒です( 一一)
現金勘定はない方が管理上とっても良いですね。

立替経費精算書と、その領収証を預かることになります。

⑥クレジットカード利用明細

どの会社も経費を使うためのクレジットカードを持っていますね。
アメックスやダイナースなどですね。この明細とその領収証を預かります。
だいたいが今月使ったものは、翌月か翌々月に決済されるという流れです。
入力の仕方は次のパターンが多いと思います。
ⅰ.カード決済がされた日に、その明細を経費にする
 →これだと、実際の使用日より経費計上が最大2か月遅れます。
ⅱ.翌月に決済される明細を、当月に未払い計上する。
 →実際の使用日より、経費計上が1ヵ月ほど遅れます。
ⅲ.実際の使用日に未払い計上をする。
 →使用日と計上日が一致して正確だが、
  未払金の残高が一致しているか把握しづらい。

私個人的には、経費計上が2か月も遅れるのはあまり正確でないので嫌だし、
未払金の残高が合っているかの確認に時間を要するもの嫌なので、
間をとってⅱ.の方法を良く使います。

⑦給与データ(支給控除一覧)

その月に支払った給与データ(一覧)を預かります。

⑧その他の支払明細

その他、スポットで生じた経費の請求書や、固定資産を購入した時なとの請求書を預かります。

⑨その月に交わした契約書のコピー

新たに交わした契約書のコピーを預かります。目的は主に次の2点です。
・取引(支払い)の内容を正確に把握し、正確な仕訳を切るため
・印紙税の判断

契約書を交わすということは新たに取引が生じ、支払い(入金)が発生する可能性が高いです。
会計事務所として、契約書の確認は必ず必要です。
税務調査でも契約書の確認は必ずといっていいほど行われます。
例えば入力をしていて、
ある月から通帳に毎月「ABCリース ××円」という支払いが出てきたとします。
あまり深く考えず、「賃借料(リース料)××円/預金××円」としちゃったりします。
あとになって社長から、
「ABCリースで割賦払いで購入した機器の残債が決算書に記載されていないって、銀行から言われたんだけど。」となったりします。これで担当者は一瞬にして信用を失います。
正しくは、「機器×××/未払金×××」で、「未払金××/預金××」ですよね。
減価償却になっていきますので、経費額も間違っていたことになります。
また、契約書には印紙が必要な場合があります。その部分も確認します。
税務調査で目立って何も見つからないと、最後は契約書をひたすら確認し、
印紙の貼付もれを指摘されたりしますので、注意が必要です。

ちなみに余談ですが、収入印紙は同じに見えても、
年代で定期的に微妙に絵柄を変えていて、
いつ頃貼ったかわかるようにしていると聞いたことがあります(;゚Д゚)
税務調査の事前準備で印紙の貼付もれがわかった場合、慌てて貼ったりするのですが、
契約日頃の印紙と今の印紙の絵柄が微妙に違うので、後で貼ったことがわかるのだとか…。
なお、今までそのような指摘を受けたことはなく、
本当かどうかわかりませんので、聞き流してください(^-^;

以上が記帳代行を請け負っている場合の、会計事務所側の対応になります。
ただ、お客様側で入力する場合でも、用意する資料は基本的に一緒になります。

以上が、お客様への対応という視点でのお話でした。
特に、会計事務所初心者の方に参考にして頂けるとうれしいです。
次回「記帳代行とは?④」は記帳代行をする場合の、会計事務所内部での対応という視点で書いていきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました