収益事業とは何??・・・ペット葬祭業事件「租税判例百選を読む⑥」

2科目免除大学院
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一般財団法人などのお話です・・・

今回は「収益事業」について考えていきたいと思います。このことが問題になるのは、対象の会社が「社団」や「財団」である場合です。最初に少し、一般社団法人や一般財団法人の概要について説明したいと思います。
例えばスポーツの団体や、文化事業などの団体は、「一般社団法人」とか「一般財団法人」だったりしますよね。社団や財団は、利益を目的としていない事業を行っていたりするので、法人税法では、その法人から得られる利益のうち、「収益事業」から得られる利益には法人税を課し、収益事業以外の「非収益事業」から得られた利益には、法人税を課さないと定めています。一応補足ですが、株式会社や合同会社は、利益を上げることを目的として設立されており、行われるすべての事業が「収益事業」と解されますので、このことについて考える必要はありません。
ですので、一般社団法人や一般財団法人は、その行っている事業が、法人税法でいう「収益事業」に該当するかどうかを、基本的には「自己判断」して、法人税の申告をすることになります。複数の事業を行っている場合は、それぞれ「事業ごとに、収益事業に該当するかどうか」を判断します。

公益社団法人・公益財団法人とは?

この社団や財団のうち、その公益性の高さから、内閣府や都道府県からその公益性の認定を受けることを「公益認定」といい、この公益認定を受けた法人を、「公益社団法人」「公益財団法人」といいます。(ちなみに2008年に社団や財団の公益認定や公益法人等への移行にかかる法改正があり、かなりの経営判断を迫られました。)公益認定を受ける過程で、「うちの社団はこの事業が公益目的事業だと考えています」といった感じで申請をして、認定を受けます。そうしますと法人税では、この公益目的事業として認定を受けた事業については、有無を言わさず「非収益事業」として取り扱い、非課税となります。そして残りの公益認定を受けていない事業について、別途、収益事業か否かを判断して、法人税の申告をすることになります。

国税庁のHPにわかりやすい図解があったので参考にしてください。
収益事業とは何か??ですが、34の事業のいずれかに該当しが定められており、かつ、 継続して事業場を設けて行われるものをいいます。
国税庁HP:「一般社団法人・一般財団法人と法人税」

一般的な会計事務所の場合、この一般社団法人等の税務に触れることは、かなり少ないと思います。一般財団法人等の税務に特化されている会計事務所もたまに見かけますが、数は少ないと思います。理由は、その一般社団法人等のすべての事業を非収益事業だと判断した場合、税務申告がその時点では不要だからです。その場合だと、会計事務所としては売上になりませんよね(^-^; 決算書なるのものは行政に提出する必要があるので作成が必要なのですが、その部分のお手伝いだけですと顧問料もあまりもらえませんし、決算書だけだとしたら自社で行っているケースが多いように思います。

前置きが長くなりましたが、この収益事業かどうかの論点は、一般社団法人等と同じように、営利目的で設立されていない、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、NPO法人などに対しても同様に考えていきます。今回は租税判例百選より、宗教法人が、その行っている事業について、収益事業か否かを争った事件をご紹介したいと思います。

※過去の租税判例百選シリーズも、ぜひご覧ください。
①脱税のための手数料は損金になるか??
②メガネの購入は医療費控除できる??
③交際費とは?「オートオークション事件」
④サラリーマンが自家用車を売却して損益通算??
⑤「親子歯科医師事件」

収益事業の意義・・・「ペット葬祭業事件」(最高裁平成20年9月12日第二小法廷判決)

【事実の概要】
昭和44年に設立されたA宗教法人は、昭和58年頃からペット葬祭業を行っていました。境内にペット用の火葬場、墓地、納骨堂等を設置し、死亡したペットの引き取りのための車も保有し、葬儀から法要までの一連の業務を行っていました。また、この事業のパンフレットを作成したり、特設のホームページも開設していました。これら事業に対する利用者の費用は、そのペットの重さや火葬方法で8000円~50000円と定められており、個別の墓地を利用する場合は、年間2000円の管理費と、3年更新で10000円の更新料がかかるとされていました。また、納骨堂の利用についても永代使用料が35000円程度と年間の管理費が2000円と定められていました。
A宗教法人は、これらの事業は収益事業にあたらないとし、法人税の申告をしてきませんでしたが、Y税務署長は、これらは34事業のうち、物品販売業、倉庫業、請負業に該当し、収益事業に該当するとし、過去5年分の法人税の決定処分を行いました。これにA宗教法人は不服とし、裁判になりました。

【結論】
地裁、高裁、最高裁ともにA宗教法人の請求を棄却し、A宗教法人の敗訴となりました。

宗教法人を含めた公益法人等の収益事業か否かで争われた例は少なく、この裁判が最高裁までいって判断された初めての事例だそうです。
まず、この34事業をみてみますと、事業を行っていたらほぼどれかに該当してしまいそうですよね(^-^; 判旨には、「本件ペット葬祭業は、外形的にみると、請負業、倉庫業及び物品販売業の形態を有すると認められる」とあります。その上でのポイントは「お金のもらい方」にあると考えられます。収益事業か否かは、そのお金を「役務の対価」として得ているのか、それとも「喜捨等」の性格として得ているのかで異なります。「喜捨」って聞き慣れないですよね(^-^; これは例えば恵まれない人への寄付とか、そういった意味です。この事例では、A宗教法人が明確な「料金表」をもとに利用者からお金を得ていました。その場合は、それが例え宗教行為の意味があったとしても、喜捨等の性格があると言えない、と判旨には書かれています。

私の経験談・・・ 

私も、ちょうど2008年頃の公益認定の移行期だったのですが、公益財団法人の担当をした経験があります。その財団は、主軸の事業から派生した事業がいくつかあり、規模も大きく展開されていました。収益事業と非収益事業(と考えられる)が複数あり、部門会計を細かく取っていたのですが、かなり大変でした(*´Д`) そして、あるとき税務調査が行われました。
いくつか論点はあったのですが、こちらとしては非収益事業と考えて、税務申告から除いていた事業について、調査官から「これは収益事業ではないか」との指摘が入りました。その事業の内容ですが、その財団に所属する会員が作成した作品を、その財団の寺院のようなところに奉納するのですが、その奉納の際に、会員からお金をもらうことがある、といった事業でした。この事業について、我々が関与する以前の税務調査でも同じような指摘があったそうですが、結論としては問題にならなかったと聞いていたこともあり、同様に非収益事業としていました。そのときも、結論としては、収益事業とされることはありませんでした。収益事業とされなかった理由は、会員のお金の支払いは、あくまで会員の任意であって、金額も定められていなかったことと、そこで得たお金は、あくまでその事業の維持継続のためにしか使用していなかったこと、だと考えられます。ちなみにこれが収益事業だとされていたら、どえらいことになっていました(^-^; 

先ほどのペット葬祭業も、料金は明確にせずに、あくまで利用者の寄付のような形をとって、任意として行っていれば、状況は違ったかもしれませんね。でもこのA宗教法人、5年分の追徴課税はされたようですが、それ以前の分は、きっと時効で不問にされていますよね。税金の時効は、法定申告期限から原則5年(悪質だと7年)です。A宗教法人が他に収益事業があって、税務申告していたかどうかはわかりませんが、やはり、そもそも申告をしていないと、発覚するまでに時間を要するみたいですよね。ちゃんと税務申告をしているところの調査も必要だとは思いますが、無申告(非収益事業としているケースも)の税務調査を、もっと強化して頂きたいなと思いますヽ(`Д´)ノ

あまり触れることがないであろう、公益法人等の税務についてのお話でした(^^)

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